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Go! Fair Energy〜自然エネルギーへのシフト〜

対談風景

ピープル・ツリーは2012年5月2日、フェアなエネルギーへの転換と原発依存からの脱却という2つのメッセージをプリントしたオーガニックコットン製のTシャツ「Go! Fair Energy Tシャツ」の販売を開始しました。


このTシャツは、ピープル・ツリーが国際環境NGO「グリーンピース・ジャパン」が呼びかけている自然エネルギーへのシフトを推進する「自然エネルギー革命シナリオ」に賛同してコラボレーションを実現させたもの。 折しも日本では、昨年3月の東日本大震災がもたらした原発事故以降、54基あった国内の原発のうち4基が廃炉、残り50基は定期検査後の再稼動が見送られついに5月5日には稼動している原発がゼロになるという大きな転換点を迎えました。日本はこのまま原発ゼロを維持してエネルギー政策の転換を実現できるのか、グリーンピース・ジャパンの自然エネルギー担当高田久代(たかだ・ひさよ)さんに話をお聞きしました。


(聞き手:ピープル・ツリー広報ディレクター 胤森なお子)


「Go! Fair Energy Tシャツ」 Go! Fair Energy Tシャツ 原発のない日本 Go! Fair Energy Tシャツ フェアエナジー



グリーンピース・ジャパンの自然エネルギー担当高田久代(たかだ・ひさよ)さん

胤森(以下、胤):グリーンピースは、原発にも化石燃料にも頼らないエネルギーへのシフトを進める「自然エネルギー革命シナリオ」を提唱していますね。CO2や放射能を放出せず、持続可能で、限られた地域に大きな危険の負担を強いることのない自然エネルギーは、「フェアなエネルギー=フェアエナジー」ということでピープル・ツリーも賛同しています。シナリオには具体的にどのような道筋が描かれているのですか?


高田:(以下、高):このシナリオは、原発や化石燃料への依存を段階的に廃止していくことを描いています。2012年にすべての原発を稼働停止しても必要な電力がまかなえること、2020年に自然エネルギー発電で電力の43%をまかなえること、2020年までに温室効果ガスを1990年比で25%削減できること、の3つが可能であることを科学的データに基づいて示しています。

胤: 現在は原発停止による不足電力を火力発電などで補っている状態で、地球温暖化への影響が心配されていますが、このシナリオではそれを自然エネルギーにシフトすることが可能ということですね。本当に実現性は高いのでしょうか?

高: もちろん、とてもハードな挑戦であることは確かです。でもそれは、とても挑戦しがいのあるシナリオで、実現は可能だと信じています。エネルギー問題はどの国でもさまざまな壁にぶつかっていて、日本が自然エネルギーにシフトできるかどうかは、世界中から注目されています。


胤: 先進国では自然エネルギーの取り組みが進んでいる国もありますが、途上国の多くではまだ日常生活に必要な電気さえ不足している状況です。ピープル・ツリーの生産者パートナーがいるインドやバングラデシュでは停電によって生産もままならないという問題に直面していて、原発の建設を待ち望んでいる人たちもいます。一概に脱原発を推し進めてよいのでしょうか?


高: インフラが整っていない国の人たちにとって、先進国から導入される原発技術が輝いて見えるのは当然かもしれません。でも、よく考えてみてください。彼らが欲しいのは「電気」であって、電気を作る手段は原発でもそれ以外の設備でもかまわないはずです。風力や太陽光などの自然エネルギーを利用した発電所建設は急速に増えていて、2010年に世界中で新しく建設された発電所を設備容量で比較すると、自然エネルギーの設備容量が全体の半分を占めるまでになっています。2000年から2010年までの間に世界で建設された原発の設備容量は全体のわずか2%なんですよ。同じ10年間に占める自然エネルギーの割合は26%に達しています。


胤: それは知りませんでした! 自然エネルギーはそこまで主流になってきているんですね。風力や太陽光はどうしても、発電源としては不安定で主力にはなりえないというイメージがあるのですが。


高: 風力や太陽光は、たしかに天候などにより変動します。でも「変動する」ことと「不安定」は同じではありません。変動はある程度予測できますし、予測の精度が上がれば複数の発電源から電力を融通しあって供給量を安定させることが可能です。昨年の原発事故を考えれば、原発こそ「安定した」電源とはとても言えないのではないでしょうか。ドイツでは既に、国内の電気供給量のうち9%を2万基の風車が担っています。これに対して日本の風車はまだ2,000基です。


広々とした農地に建てられた風車。ドイツハンブルク郊外にて。c Greenpeace Japan

胤: 高田さんは5月中旬にドイツを訪問されたばかりですよね。自然エネルギー先進国であるドイツの現状をおしえてください。


高: ドイツは2002年に緑の党と社会民主党との連立政権が脱原発の方針を決め、2023年を脱原発の期限としました。その後政権交代によりこの期限が延長されるなど脱原発ムードが後退しましたが、昨年の日本の事故を受けて17基の原発のうち8基を一次停止し、2022年に脱原発を実現すると決めたのです。現在ドイツには発電、送電など電気事業に携わる会社が800社以上もあります。その中で自然エネルギーに特化した比較的規模の大きな会社が4社あり、実はその1社はグリーンピースが1998年に設立した「Greenpeace Energy(GE)」という電力会社です。GEは現在、12万世帯、8,000法人に電力を供給しています。私はドイツを訪問するたびにGEの発電所の風車に上るのですが、青い空と緑の農地が広がる風景はとても心が安らぎますよ。


胤: 風車は農地に建てられることが多いのですか?

高: はい。というのも、風車のために農地を提供すると一定の借地料が得られるので、農家が積極的に参加しているんです。もちろん騒音などの弊害も合わせて検討しなければなりませんが、農業収入が天候に左右される農家にとって、一定の収入が保証されるメリットは大きく、総合的に考えて風車を選ぶのです。北部の農村地帯ではこういった「半農半電」で生計を立てている農家が増えています。この成功例は、広大な土地がある北海道などでは応用できると思います。


胤: 日本では、原発が立地自治体の財政や雇用を支えているので脱原発は難しいという議論がありますよね。


高: これも先ほどの途上国の例と同じで、その地域の人々が必要としているのは雇用であって、必ずしも原発施設で働くことではありませんから、切り離して考えるべきです。自然エネルギー革命シナリオでは、自然エネルギーへのシフトによって2015年までに電力分野の雇用数がいったん32万6,000人にまで大幅に増加し、2030年には14万4,000人。それでも2010年の8万1,500人に比べて大きく増える見込みです。この数には原発施設の解体に伴う雇用は含まれていませんから、実際はもっと増加するでしょう。原発停止直後は、定期点検作業に携わっていた2,000〜3,000人の雇用が失われるので補償制度を整える必要がありますが、長期的に見て自然エネルギーは原発施設の代替雇用として十分有望なのです。


太陽光パネルに覆われたマンションのベランダ。ドイツ・フライブルクにて。c Greenpeace Japan

胤: なるほど。そういうシナリオがあれば、原発がなくなっても大丈夫という希望が持てますね。ドイツでは他に参考となる事例はありましたか?


高: 南部のフライブルクという環境都市で「プラスエネルギー住宅」を見学しました。ドイツではもともと建物の断熱がとても進んでいて、二重ガラスは当たり前なのですが、この住宅では三重ガラスで壁が厚く、サッシは樹脂や木材が原料のため冷気がほとんど屋内に入りません。太陽光パネルは屋根だけでなくベランダの壁にまで張り詰められ、地中熱やエレベーターが降りる時の力まで発電に利用しています。こうして、住人が使う電力より生み出す電力の方が上回っているので、余った電力は電力会社に売っています。


胤: すごいですね。ドイツでは自然エネルギーに対する人々の意識は相当高いのでしょうね。


高: そうですね。世論調査では脱原発に賛成する人は8割で、5割の日本よりは高いのですが、実際に自然エネルギーを選択している世帯は全体の2割だそうです。逆に言えば、たった2割しかいなくてもエネルギー政策を変えることを実現できたのですが。ドイツ人と日本人の違いを一番顕著に感じるのは、ドイツ人は「原発はいやだ」と思う人は口に出してそう言うのに、日本人は考えていることをあまり口にしないという点です。 でも、思ったことを口にしなければ相手に届かない。出さない声はゼロということです。たとえ小さくても声に出せば1になる。0+0はいつまでもゼロだけど、1+1+1・・・と積み重なれば大きくなる。日本人はもっと声を出すべきだと思います。


胤: それはまさに、私たちがフェアトレードを広めるよう伝えているメッセージと同じです。フェアトレード商品を買う人が一人でも増えていけば、大きな力になって貧困をなくすことにつながるという・・・。


高: 今回ドイツで、会う人全員から「日本はどうやって原発ゼロを乗り切っているのか」と質問されました。火力発電で代替している部分もあるけれど、昨年は東京電力管内でピーク時に18%もの節電が実現したという話をするとみなにびっくりされました。日本の電力会社は節電を呼びかけるために日ごとの電力の需給状態の見通しを解説する「でんき予報」を提供していますが、こういう透明性があれば国民も節電に協力できるんですね。今日本が経験していることは、世界にとってもかけがえのない財産です。日本の私たちがどういう答えを出すかは、世界のエネルギー政策の方向を決める大きな鍵を握っているのです。


胤: 責任重大だけれど、お話を聞いてきっと実現できるという希望が見えてきました。フェアトレードとフェアエナジーで世界が変わる日はそんなに遠くないかもしれないですね!